ピカソとジャズと自分

高階秀爾『ピカソー剽窃の論理』によると、ピカソは過去の偉大な作品に基づいた作品を多く描いたそうである。
単なる模倣ではなく、それをすっかり自分のものとするのである。
ピカソも「真似」から自分の個性を創造していた。
ピカソを知らない人も彼の絵を数枚見れば、多くの絵の中からピカソの絵を選び抜くのは難しくない。

ジャズを学び始めると、偉大な先人の演奏をコピーしろと言われる。
音符を書いてコピーしたり、耳コピだけの場合もある。
ビルエバンズというピアニストは最初に発売したアルバムには満足できなかったそうである。
バッドパウエル、オスカーピーターソンといった偉人の影響がはっきりと聞こえてくる。
ビルエバンズも「真似」から自分の音を創造してきたのだろう。
3枚目に発売されたアルバムはビルエバンズの音である。
ビルエバンズを知らない人も彼の音楽を少し聞けば、たくさんのジャズピアノを聞いて、ビルエバンズの音楽だと認識することは難しくはない。

私自身は2018年にオリジナル曲で構成したアルバム「輪廻転生」をリリースした。
アメリカでの恩師に聞いてもらった。「色々影響を受けているけど、アキラ自身の音がするようになってきている。」と言われた。
「きている」ので、あくまでも現在進行形である。
もちろん、ピカソやビルエバンズと自分を比べることなどできないけど、模倣の末に少しでも自分の音というものが出来つつあるのであれば嬉しい。
私を知らない人も私の音楽を少し聞けば、たくさんのジャズピアノを聞いて、立石照の音楽だと認識される日が来てほしいものである(笑)。