ソロピアノアルバム「ルパン3世」3月9日リリース

ニューヨークの留学時代にお世話になったレジー・ワークマン(b)は「ジャズは白いキャンバスに絵を描くようなもの」と言っていました。「そんなことをできるのか」と思いながら、自分の気に入った音楽、絵、本、体験、景色など絵を描くように音にできればと思い続け、試行錯誤をしてきました。その一つの答えがこのアルバムです。

視聴・ご購入はこちらから  https://linkco.re/q1Q2HPtR 

  1. チュニジアの夜
  2. ルパン三世のテーマ
  3. Close to You
  4. いつか王子様が
  5. Spain
  6. Moanin’
  7. Georgia on My Mind (我が心のジョージア)
  8. A 列車で行こう
  9. 酒とバラの日々
  10. Rock It!

チュニジアの夜

ディジーは25回この曲をレコーディングして、世界中で何千回も演奏したそうです。

それだけこの曲は色々な解釈を許す、可能性を秘めた曲で、幅広く人々に受け入れられている曲ということがわかります。ジャズの歴史を英語で講義する機会があり、最初にこの曲を紹介しましたが、ジャズをあまり聞いたことがない一般の学生にも親近感が持てる曲だったようでした。

ディジーガレスピーはライブの休憩時間にピアノを弾いて、曲のコード進行を思いついたそうです。ウオーキングベースではじまらないベース音が非常に印象的な曲です。

このベースラインに魅了されますが、ピアノではウッドベースのような表情豊かな音は出せません。しかし、ピアノではこのベースラインを少し変化することによって少し違った雰囲気は味わえるのではないでしょうか。

ルパン3世

幼少時代にアニメションをテレビで視聴し耳に残っている曲です。大人になって聞いてみると、リズムが複雑であったり、色々な趣向が凝らされていることがわかりました。いろいろなバージョンが出ているようですが、自分のルパン三世は演奏の通りです。

Close to You

Yesterday Once Moreを歌うKaren Carpenter の美声に魅了されてカーペンターズのベストアルバムを中学校1年生の時に購入しました。中学校で英語の授業が始まって英語に親近感を覚えていました。アルバムの全曲の中で一番気に入ったのがClose to youで口ずさんで、歌詞の内容や英語そのものもわからずによく歌っていました。確か中2の時に帰国子女に混じってネイティブの授業を受ける機会がありました。当時は英語をそれほど話せなかったのですが、「カリフォルニアに住んでいたの?」と尋ねられ、「You are a second teacher」と言われたのを覚えています。後で知ったShadowingという通訳の英語の訓練を中学生の時に自然と行い、英語の発音がよくなっていたのだと思います。

2020年はずっとClose to youという曲が自分を追いかけてきており、車に乗って滅多に聞かないラジオをつけたら、Close to youが流れてきたり、色々な店に入ってもBGMでClose to youが頻繁に流れてきました。そこでClose to youに感謝をしなければならないと思い、この曲に挑戦することにしました。

いつか王子様が

80年以上も前の曲で、1937年のアニメ映画『白雪姫』の挿入歌です。ディズニー映画の『ピノキオ』の「星に願いを」が最も人気があるのかもしれませんが、この曲は大人の雰囲気を醸し出しているのかもしれません。それゆえ、多くのジャズミュージシャンが演奏しており、Bill Evansはこの曲を何回もレコーディングしています。拍子が3拍子と4拍子に入れ替わるバージョンもあります。また、Diana Ross and The Supremesなどの多くのポップスの歌手もカバーしています。自分自身はこの曲の中に前衛的に?演奏できるスポットを発見したので、前衛的な演奏に少し挑戦してみました。

スペイン

これを書いている二週間前ぐらいに作曲者であるChick Coreaは「珍しい型のがん」で、79歳でお亡くなりになりました。逝去する前に、彼は「どこでも創造の喜びを伝える続けることが自分の使命」とおいうメッセージを残したそうです。コロナ禍にあっても、Youtubeで音楽を発信して、Joe HendersonのバンドでRecorda-Meを演奏するエピソードを語っていました。そのバンドに自分が師事したReggie Workmanがいたということで、繋がりを感じることができました。

 曲の前半はJoaquin RodrigoのConcierto de Aranjuezの第二楽章を用い、源氏物語の「もののあわれ」を感じます。しかし、後半のサンバ風のアップテンポな雰囲気はお祭りのようでありながら、どこかに物憂げさを残している曲だと思います。ある意味では枕草子の「いとをかし」なのかもしれません。

今後この曲を演奏するときはもっと「もののあわれ」と「いとをかし」融合して演奏できるようになりたいと思っています。

モーニン

1950年頃にBobby Timmonsによって作曲。モーニンはGood Morningのモーニングとは関係がなく、Moaningでうめき声を出すなどの意味です。ゴスペルの影響を受けた、コールアンドリスポンスのキャッチーなメロディーは、多くの人の耳に親みやすく、聞き易い曲で世代を超えて人気があります。このキャッチーなメロディーを本格的に演奏するのは至難の技かもしれません。この曲には人を惹きつけるパワーがあり、そのパワーを最もパワフルに表現しようと思いました。

Georgia on My Mind (我が心のジョージア)

1930年にHoagy CarmichaelとStuart Gorrellが作曲。1960年のRay Charlesのカバーが有名ですが、1961年に彼は白人と黒人の座席が分離されていることに抗議して、ジョージア州でのコンサートを中止しました。映画では彼はジョージア州から追放されたことになっているみたいですが、実際には800ドルの罰金をプロモーターに払っただけのようです。しかし、1979年にはジョージア州の州歌となり、1996年ジョージア州の州都アトランタで開催されたオリンピックの開会式でRay Charles自身が演奏をしました。

この曲には心の奥にあるものを抉り出す力があり、演奏中にアメリカでの色々な思い出が込み上げてしまい、演奏続けるのが大変な状態になってしまいました。

A列車で行こう

1939年にBilly Strayhornが作曲。Duke Ellingtonオーケストラの代表作。聞き易い曲で、場所を問わず演奏されている。

演奏の際は大きな構想というのはなく、細かい構想を積み上げたところに大きな構想が結果的にあったような感じがしました。世界各国で旅をし、仕事をしていたのでその経験が演奏の中に結果的に出てきたのかもしれません。

酒とバラの日々

Henry Manciniが1962年に作曲。映画『酒とバラの日々の』のテーマ曲。Oscar Peterson, Dizzy Gillespie, Wes Montgomery, Dexter Gordon, McCoy Tyner, Bill Evans, Ella Fitzgerald, Cassandra Wilson, Howard Andy Williamsなど多くのミュージシャンが取り上げている。

自分はこの曲のハーモニーをオープンヴォイシングという音と音の感覚を1オクターブ以上で演奏する手法を覚えた時に最初に演奏した曲である。ハーモニーとメロディーの響の美しさを自分で創り出すことを教えてくれた最初の曲であった。

Rock It!

締めくくりにブルースぽいピアノをアグレッシブに弾こうと思い演奏した曲です。